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3月12日菅直人武勇伝のうそ

第一部 広がる菅直人偽「武勇伝」

政府の偽答弁と4月4日の毎日新聞のよいしょ記事のために、菅が12日に未明に東京電力にベントを指示したが、東京電力がおとなしく従わなかった。そのため、被害が拡大した等という戯言が、広がり始めている。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110404ddm001040085000c.html
今日の産経もその線に沿った説明をしている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110410/stt11041000390000-n4.htm

政府は12日午前3時までベントしないよう指示していた

政府の発表等を見る限り、事実は全く逆である。12日午前3時の枝野記者会見の時まで、政府は東京電力にベントの作業を停止させていた。
以下の記者会見の発言を見てほしい。

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平成23年3月12日(土)午前3時12分頃からの内閣官房長官記者会見
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4477.html
会見開始後00:50秒頃
【枝野】「当事者である東京電力、及び経済産業大臣からも発表をいたしておりますが、福島第一原子力発電所について原子炉格納容器の圧力が高まっている恐れがあることから、原子炉格納容器の健全性を確保するため内部の圧力を放出する措置を講ずる必要があるとの判断に至ったとの報告を東京電力より受けました。」
「6時に官邸のヘリポートを出まして福島のただいまの原子力発電所、ここは現地に降りれるという方向でございます。」
06分:10秒頃
【記者】「総理がその原発を視察されるという時っていうのは、すでにもうその原発でのその大気への作業っていうのはやっているんですか? 大気への作業というのは何時頃やるんですか?
【枝野】「これはあの東京電力があの技術的な点を含めて最終的な調整をする話ではありますが、これを行う前にしっかりと国民の皆さんに予めご報告しなければならないということを東京電力の方に要請というよりも指示をいたしまして、それでこの時間に、 経済産業省及び官邸でご報告しましたのでそんなに遠くない時間になると思っております。」

【記者】「先ほど1時40分に出された発表資料で予測の時間帯が書かれていまして、27時20分に原子炉格納容器???を開けるということ原子炉格納容器ベントにより放射性物質が放出される??? ここには書かれていないんですけど、これは3時20分を指すと思うんですけれどその辺の説明をちょっとしていただければと」

【枝野】「それは多分原子力保安院が可能性をお示ししたものだろうというふうに思っておりますが、そうした可能性の前提も含めて実際にこのベントを開けるという段階よりも前にちゃんときちっとご説明申し上げなければならないということで、3時で経産省と私の方とで発表するということでございますので、あの具体的な詳細な時間はまさに現場の作業の手順段取り等によりますので若干のズレがあり得るかと思いますが、そう遠くない時間に圧力を下げる措置に着手するものと思っております。」

【記者】「そういうことは現時点では同時並行で進んでいるとことではないということですか?」
【枝野】「少なくとも発表してからにしてくれということは要請というよりかなり指示に近い形で東京電力に申し伝えてあります。あの経産省、それから私の方でもう発表いたしましたので作業の手順に必要ならば入っていてもおかしくないと思います。」
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酷いプロパガンダ

東京電力に発表するまで(つまり3時まで)待ってほしいと言っていたのは政府ではないのか?これが、どうして、午前1時半に指示したのに東京電力が従わなかったという政府説明や毎日新聞記事になるのか?全く不可解である。嘘も百回言えば本当になるとでも思っているのか?

今日の統一地方選のために政府と一部マスコミが画策したプロパガンダだろうが酷すぎる。

原子炉等規制法64条3項による命令はどうしたのか

百歩譲って、記者会見では嘘を言っていて実は午前3時の時点でも、東京電力が抵抗していたとしよう。(冒頭の「当事者である東京電力、及び経済産業大臣からも発表をいたしておりますが、福島第一原子力発電所について原子炉格納容器の圧力が高まっている恐れがあることから、原子炉格納容器の健全性を確保するため内部の圧力を放出する措置を講ずる必要があるとの判断に至ったとの報告を東京電力より受けました。」というのが、全くの嘘だったのならと言うこと)

それならそれで、東京電力に即時に命令を出せばいいのではないか。事態の緊急性がわかっていたのだろう。そしてそのための権限も十分与えられている。以下の、下の条文参照。

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原子力災害特別措置法
(原子力災害対策本部長の権限)
第二十条  原子力災害対策本部長は、前条の規定により権限を委任された職員の当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域における権限の行使について調整をすることができる。
 2  原子力災害対策本部長は、当該原子力災害対策本部の緊急事態応急対策実施区域における緊急事態応急対策を的確かつ迅速に実施するため特に必要があると認めるときは、主務大臣に対し、規制法第64条第3項 の規定により必要な命令をするよう指示することができる

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律64条3項
3  文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣は、第一項の場合において、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害を防止するため緊急の必要があると認めるときは、同項に規定する者に対し、次の各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、製錬施設、加工施設、原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄物埋設施設若しくは廃棄物管理施設又は使用施設の使用の停止、核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の所在場所の変更その他核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができる
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東京電力が言うことを聞かないという言い訳のバカらしさ

もし東京電力が本当は抵抗していたのなら、原子炉等規制法64条3項の命令を1時半の段階で粛々と出せばいいだけの話。それを、「東京電力が言うことを聞いてくれませんでした。東京電力はけしからんです。」等というのは全く政府の体をなしていない。そのための法律であり、そのための権力であろう。それとも官房機密費を使えるのが権力だとでも思っているのだろうか?我々庶民が、東京電力の対応が遅いと言って怒るのはともかく、権限を持っていた政府が命令も出さず、東京電力が言うことを聞いてくれませんでしたなどという泣き言を言うのは全くバカかと言いたくなる。

そして、冒頭にも書いたとおり、実際には東京電力は、ベントをしたいと政府に言ってきたと3時の時点の会見政府が言っている。しかし、それを政府の要請と言うより指示でベントを3時まで待たせたと。嘘を言うと論理破綻がおきるとはこのことだろう。

唐突な原子炉等規制法64条3項による命令の意図は?

ちなみに、午前6時50分になって政府は、原子炉等規制法64条3項によりベント命令を出している。なぜこんな時間に命令を出しているのか?東京電力は、自分からベントしたいと言ってきているのではないか?仮に記者会見内容が嘘だとしても、ベントは緊急ではなかったのか?1時半か遅くとも3時の時点で出すべきべきではなかったのか?さらに、NHK等の報道http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110312/k10014616851000.htmlによると12日未明に東京電力はしようとしたが、電源が落ちて自動ベントができなくなり、手間取っていたとのこと。詰まるところ、ベントの意思はあり、作業は始まっていたわけで、命令など無意味。

意味があるとすれば、その後、「午前7時11分 菅首相、福島原発入り」を見込んだパフォーマンスのため、もしくは、責任逃れのためだったとしか思えない。
現地にいるときにうまくベントできれば、自分でベント宣言をして政府の指示によりベントをさせましたということになり支持率がアップする。仮に、ベントがうまくいかなくても、政府は危機を察して東京電力に命令をいていたという事実だけは確定させることができる。

なお、菅が到着するまでベントをさせなかったというのは公表資料から見るとないように見える。

原子炉等規制法64条1項

ところで、原子炉等規制法64条3項の命令がないため6時50分以降しかベントできなかったという説明が一部に流れているが、妥当ではない。政府、東京電力は、原子炉等規制法64条1項で処理しようとしていた。政府が何度も「東京電力の判断で放出」と言ったのはこのことを指している。
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原子炉等規制法64条1項
第六十四条  原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。以下この条において同じ。)は、その所持する核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉に関し、地震、火災その他の災害が起こつたことにより、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに、主務省令(第三項各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、当該各号に定める大臣の発する命令をいう。)で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。
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いずれにしても、東京電力にもちろん最大の責任があるが、この期に及んで事実を歪曲する政府と一部マスコミは悪質である。

第二部 3月12日早朝の事態急変

事態はその後、3月12日早朝5時44分に10k圏内まで避難指示が出るに至る。それまでに何が起こったのか、公表資料から見ておきたい。

政府の想定と現実

3月12日午前3時12分の枝野会見を見ると前述したとおり、政府は東京電力にベントをこの記者会見まで待たせた。政府は、記者会見終了後(午前3時30分ぐらいか)すぐにでもベントが始まると考えていたようだ。多分、ボタンを一つ押すか、バルブを一つ開ければすぐ処理が済むと考えていたのではないか?そして午前中、菅が視察するころには事態は収拾に向かっていると考えていた節がある。
(もちろん、よく言われているように、菅が、3時まで待たせたのなら、あと4時間ぐらい待たせて、7時にベントすればいいと指示した可能性もあるが、公表資料からそれは見えてこない。)

ところで、ベントだが、東京電力も政府も重大ではあるがそれ程危険なこととは考えていなかった。
同じ枝野記者会見から、
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4477.html

会見開始後01分38秒頃
「この作業に伴い原子炉格納容器内の放射能物質が大気に放出される可能性がありますが、事前の評価ではその量は微量と見られており海側から吹いている風向きも考慮すると現在とられている発電所から3k以内の避難10k以内での屋内待機の措置により住民の皆様の安全は、十分に確保されており落ち着いて対処いただきたいと思います。既に21時23分に官総理が発した避難指示に沿って半径3km以内の避難は完了をいたしました。この避難指示の内容に変更はありません。従って現地の住民の方々は、自衛隊、警察、自治体などの指示に冷静に従っていただきたいと思います。」

ベントできず

ところが、そのベントは、ボタンを押してすぐ何とかなるようなものではなかった。実際にベントが行われたのが、3月12日午後になってからであることがそれを図らずも証明している。

経産省発表資料
「1 号機の格納容器内圧が上昇しており、圧力減尐のために蒸気の放出を開始した。(12 日14:40)」
http://www.meti.go.jp/press/20110312011/20110312011.pdf

NHKによれば以下のようなことをしていたようだ。
3月12日 6時18分 NHK報道
原発の空気放出 見通し立たず
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110312/k10014616851000.html

「東京電力は、福島県にある福島第一原子力発電所1号機について、原子炉が入っている格納容器内の圧力が高まっているため、容器内の空気を外部に放出する計画ですが、周辺地域で停電が続いているため、放出に向けて装置を動かすのに電気が確保できず、放出する見通しは立っていません。東京電力は、容器内の放射性物質が大気中に放出された場合でも、その量は微量とみられるとしています。」

政府の説明では、記者会見終了時の3時30分頃から措置に入っているはずだったが、実際はそんな簡単なものではなかった。

原子炉が危機的な状態に

そうこうするうちに、原子炉が危機的な状況になっていく

東京新聞3月28日
「十二日午前一時前には1号機の原子炉格納容器内の圧力が異常上昇。四時ごろには1号機の中央制御室で毎時150マイクロシーベルトのガンマ線、五時ごろには原発正門付近でヨウ素も検出された。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011032802000041.html

午前2時現在
「1号機の格納容器内圧が上昇しており、設計値400kPaのところ、600kPa程度まで上昇している可能性がある。」
http://www.meti.go.jp/press/20110312002/20110312002.pdf

午前4時30分現在
「1号機の格納容器内圧が上昇しており、設計値400kPaのところ、840kPa程度まで上昇している可能性がある。」
http://www.meti.go.jp/press/20110312003/20110312003.pdf

そして、4時40分頃から放射能が顕著に漏れ始める。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11031214-j.html

10キロまで避難指示拡大

5時44分、とうとう早朝にもかかわらず、10k圏内の人々にも避難指示がでる。午前3時の会見の時には、ベントなら3kで大丈夫と言っていたにもかかわらず、2時間ちょっとで逃げろという。前日11日の夜10時前の枝野会見では、さらに以下のように述べていたから相当慌てていることがわかる。
「3kから10kの皆さんについては室内で退避をして下さいということでございます。逆に動かれると混乱が生じてかえっていろいろなリスクが生じますのであくまでも3k以内の方々がそこから退避をしていただきたいということです。」
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4473.html

この点について、12日午前10時頃の官房長官記者会見では以下のように説明。
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg4480.html
「福島第一原子力発電所に関しましては、一号機の原子炉格納容器の圧力が高まっている恐れがあることから、本日午前5時44分に総理から新たに半径10k圏内の住民に10k圏外に避難するよう指示がありました。」
「それぞれの状況に応じて必要な範囲の指示をしてきております。圧力の上昇で先ほど一号機で圧力を降下させる措置の実施ができたと申し上げましたが(この時点では圧力は実は降下していなかった。降下したのは12日14:40(筆者注))、そのことを実施する前提で3k圏内からの退避をお願いしていたところでありますが、同時にこの圧力を降下させるための措置の実施と圧力の上昇のスピードとを見ながら万一の状況に備えて10kからの範囲の人にも退避をしていただくと、こういう指示をしたと経済産業省あるいは保安員から聞いております。」

つまり、ベントだけなら3キロで大丈夫だと思っていたけれど、圧力が上がっているためベント以外の危険性も考える必要がある。そうすると10k圏内も危ないと判断したといっている。

東京電力にベントをためらう動機があったのか

ところで、東京電力がベントに抵抗していたと言う政府のいいわけに戻るが、上述したように、既に午前2時現在「1号機の格納容器内圧が上昇しており、設計値400kPaのところ、600kPa程度まで上昇している可能性がある。」という状態であった。べントしなければ格納容器が破裂するおそれがあるというのに、ベントをためらうどんな動機が東電にあるというのだろうか。

でっち上げ武勇伝

東京電力の手際が悪かったというのは、もちろん最大級に攻められるべきだが、菅の武勇伝に結びつく話ではない。
少なくとも放射能が10キロ避難指示を出した時点で現地視察などやめるべきであった。現場は大変な状態になっていたことは想像に難くない。しかし、なぜか強行。

そのような状況のところに乗り込んでいっていったい何をするつもりだったのか?放射能などものともせず、命を捨てる覚悟で、自らバルブを開けに原子炉に突入していたのなら、武勇伝もいいだろうが、でっち上げ武勇伝はやめにしてもらいたい。
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